山口周

課題を解くアプローチとして、私が考えているのが、「サイエンス」「クラフト」「アート」の3つです。サイエンス、つまり科学的アプローチで解決できるのは、いわゆるマニュアル業務でしょう。LABORの場合、既存のマニュアルに頼れば一定の仕事の成果を上げることができます。 ところがCEOに近づくほど、サイエンスでは解けない問題が増えていきます。ここで次に頼るのが「クラフト」です。これはいわば経験や勘によるアプローチ。マニュアルに書かれていない課題にぶつかったとき、クラフトが活きてくる場面は少なくないでしょう。 ところが、現代のように変化が早い時代に入ると、クラフトを使っても対応できない課題が増えてしまう。過去の成功体験のとおりやってみても、前提となる社会環境が変わってしまっているため、うまくいかないのです。 サイエンスで解けず、クラフトも効かない――。そんなとき最後に頼るアプローチが、内在的に「真・善・美」を判断する美意識による「アート思考」です。今、世界のエリートたちが早朝のギャラリートークに参加して美意識を鍛えているのも、単に教養を身につける目的ではなく、ビジネス上の極めて功利的な目的によるものなのです。